



喜びのエレメント
日本・沖縄・ハワイにおける、人と自然のつながりを結び直す
喜びのエレメント「Elements of Joy」は、大地や海、植物など、自然とのつながりを結び直すことを通して、人びとがいかに健やかさ、幸せ、そして心身の調和を見出しているのかを伝えることを目指しています。世界的な共同研究プロジェクト AnthropoloJOY の一環として、多様な文化的伝統に生きる人びととともに、喜びを伴う環境へのケアを通して大地や海を育むことが、困難な時代に他者を思いやり、支え合うことにどのようにつながるのかを探究しています。私たちの活動について、ぜひ以下をご覧ください。また、皆さまご自身の経験や物語もぜひお聞かせください

研究について
断絶と荒廃の時代に、大地や海、植物など、自然をかたちづくるものは、いかに私たちを癒すのでしょうか。
ここ数十年、日本では、生態学的危機によって、人びとは自らの生存を脅かす危機をより強く意識するようになっています。夏の気温の急激な上昇、花粉症の増加、台風の激甚化、そして2011年3月に起きた地震・津波・原発事故という複合災害が今なお残す影響など、その脅威はさまざまなかたちで現れています。
こうした状況に応答するなかで、多くの環境活動家や食の生産に携わる人びとは、自然と直接つながるため、近代化とは異なる道を歩んできたさまざまな知恵や実践に目を向けています。そこには、日本に根ざした伝統や仏教的な実践だけでなく、沖縄やハワイなど、日本と歴史的につながりの深い地域に受け継がれてきた、祖先や土地とのつながりを大切にする伝統も含まれます。
たとえば、日本では仏教思想に着想を得た自然農、沖縄ではサンゴの育成をはじめとする地域に根ざした海や沿岸環境のケア、ハワイでは在来の森を再生する先住民主体の取り組みなどが行われています。こうした実践を通して、人びとは大地や海、植物など自然をかたちづくるものとのつながりを結び直し、自らを癒し、コミュニティを支え、損なわれた生態系との関係を修復しようとしています。
では、人びとは現在進行する地球環境の変化を、科学的な気候観測のモデルだけではなく、大地、海、水、風、植物などとの直接的で身体的な関わりを通して、どのように感じ取り、理解しているのでしょうか。
研究領域

日本における自然農の実践
気候変動、農業の担い手の減少、農村地域の過疎化、そして持続可能な食の仕事に携わる機会の不足など、さまざまな課題が深刻化するなかで、政治的・経済的・環境的な障壁がありながらも、農に携わる人びとや環境を守る人びとを支え続けているものは何なのでしょうか。新しい世代の農業の担い手を育てるためには、経済的な支援や実践的な研修だけで十分なのでしょうか。農に携わる人びとは、単に生き延びるだけではなく、自分自身や家族、そして地域社会を豊かにしながら、自らも豊かに生きていくことができるのでしょうか。Elements of Joy は、自然農、先祖から受け継がれてきた知恵、そして瞑想的・精神的な実践を通して大地を耕し、それと同時に人と人とのつながりやコミュニティを育んでいる人びとの経験に、その答えを探ります。
フィールド
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京都・大原を拠点に、日本各地で自然農や有機農業、先祖から受け継がれてきた知恵を生かした農に取り組む人びとと農業協同組織
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新規就農者のための研修・育成プログラム
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農や庭を育み、自然を直接体験することを重視する禅仏教の実践や思想
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水、土、種、収穫、そして神(かみ)として捉えられてきた自然のさまざまな存在や力を敬う、各地域の神道の祭礼や儀礼
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日本における大地を耕す営みと結びついた芸能や表現(踊り、歌、物語など)

沖縄における里海
海面上昇や海水温の上昇、そして異常気象が沿岸地域の暮らしを脅かすなかで、地域に根ざした知恵や先住民の自然観察の方法は、気候を観測する科学や技術にどのような示唆を与えることができるのでしょうか。また、海をともにケアし、喜びをもって祝う実践は、人びとの長寿や健康、そして地域のつながりをどのように育んでいるのでしょうか。
フィールド
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海藻の養殖と沿岸のサンゴ礁を守り育てる里海(さとうみ)の実践
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聖なる御嶽(うたき)とその森を守る営み
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海で遊ぶこと――シュノーケリング、サーフィン、サバニでの航海、船漕ぎ(ふなこぎ)
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島唄(しまうた)、祭り、そしてユタ・神人(かみんちゅ)・ノロとの精神的なつながりを通して、身体で海を知る営み

ハワイにおける文化に根ざした食の営み
植民地主義による強制的な移動や、先祖代々の土地、暮らし、文化に根ざした食の営みとの断絶にもかかわらず、困難な時代に土地を愛し、慈しみ、ケアする文化的実践としての「喜び」は、どのように癒しを育むことができるのでしょうか。ハワイの aloha ʻāina(アロハ・アーイナ) や mālama ʻāina(マーラマ・アーイナ)に表されるような、土地との深い結びつきや土地を大切に守り育む実践は、その問いにどのような示唆を与えてくれるのでしょうか。また、公衆衛生の実践は、土地と人を互いにケアする、その土地に根ざした先住民の知恵や伝統から、何を学ぶことができるのでしょうか。そして、他の文化の伝統からインスピレーションや癒しを得るとき、その学びを一方的なものにせず、責任と相互性をもって分かち合うには、どうすればよいのでしょうか。
フィールド
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ホノルル・カリヒを拠点とした、先住民の知恵や実践に根ざす公衆衛生のアプローチ
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在来の森の再生と、文化に根ざした食の営みとの統合
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新規就農者のための研修・育成プログラム
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文化に根ざしたメンターシップと教育のあり方
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mālama ʻāina(マーラマ・アーイナ)土地を大切に守り育むことにまつわる物語、歌、その他の芸術・表現
Azure laughing, Photo by Kaʻōhua Lucas
研究方
私たちは「喜び」を研究の対象としてだけでなく、研究の方法としても捉えています。自然環境と親密な関係を結ぶ実践として、協働する人びとがどのように喜びを育んでいるのかを、ともに活動しながら学びます。つまり、困難な時代にあっても「喜びをたどる(follow the joy)」こと。そのために、次の三つの領域に注目します。
身体性(Embodiment)
私たちは、測定だけでは捉えきれない、質的な経験を通して大地を知る方法を探究します。土を手入れすること。サンゴをきれいにすること。バケツで一杯ずつ庭へ水を運ぶこと。大地や海、水、植物など、自然をかたちづくるもの、そしてそれらを守り育む人びととともに活動しながら、身体を通した自然とのつながりが、気候変動という危機のなかでも大地を耕し、自然を大切にケアし続けるために欠けていた一つの要素なのではないかと考えます。
調和(Alignment)
近代社会の重圧を感じる多くの人びとは、進化的・文化的・精神的な意味で、祖先から受け継がれてきた伝統に自らの仕事や暮らしを重ね合わせることによって、健康や幸せを取り戻そうとしています。この観点から見ると、「喜び」は、文化に根ざした食べ物を育てて食べることや、収穫のときに祈りの言葉を唱え、歌うことなどを通して、失われたつながりを結び直すための方法となります。同時に、喜びは、自分自身がより深い調和へと向かっていることを感じ取る一つの手がかりにもなります。
物語ること(Storytelling)
物語は、ある環境のなかで何が最も大切なのか、そして何をケアし、ときには修復する必要があるのかへと、人びとの注意を向けるための一つの技術となります。私たちは、人と場所を結びつける物語に深く耳を傾けます。同時に、物語が途切れるところに生まれる沈黙や、言葉を超えた経験的な知へと私たちを導く沈黙にも耳を澄ませます。
協働
Elements of Joy は、主要な研究フィールドである日本・沖縄・ハワイに長く根ざして活動してきた人びとと緊密に協働するとともに、イギリス、タイ、ブラジルなど、世界各地の関連するフィールドで活動するパートナーとも連携しています。
私たちのチームについて詳しくはこちらをご覧ください。また、私たちとの協働に関心のある方も、ぜひご連絡ください。
実り
従来の学術論文に加えて、私たちは研究から生まれるもう一つの成果「実り」として、次のような多様なかたちの成果を生み出すことを目指しています。
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喜びと創造性から生まれるもの
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地域の人びとを元気づけ、力となり、支えるもの
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協働から生まれるもの
たとえば、みんなでつくる写真展や祭り、共同制作によるアート作品、地域支援や地域主体の研究のために共同で申請する助成金、農場から食卓へとつながる食事会、地域を越えた自然農の実践者どうしの交流(たとえば沖縄とハワイ)、農を始めたい人びとと利用可能な農地や地域資源をつなぐデータベースなどが考えられます。あるいは、今の私たちにはまだ想像もできないような、新しい「実り」が生まれるかもしれません。
Essays
「喜びのエレメント」を研究する理由
Joy in Ruins
日本では、アマチュア写真家たちが廃墟となった風景をめぐり、そのなかに喜びを再び見出そうとしています。(近日公開)
Elements of Joy(エレメンツ・オブ・ジョイ)**は、グローバルな共同研究プロジェクト AnthropoloJOY(アンスロポロジョイ) の一環です。
AnthropoloJOYは、危機的状況における「喜び(joy)」の価値、経験、表現を、文化を横断して探究するプロジェクトです。私たちは、次のような根本的な問いを考えます。喜びをどのように経験し、表現するかに、文化はどのような役割を果たしているのでしょうか。また、困難な時代において、喜びはどのように抵抗する力、立ち直る力、そして傷ついたものを修復していく力を支えるのでしょうか。
私たちの研究は、それぞれ異なる角度から喜びを探究する、4つの豊かなフィールドを舞台に展開されています。日本とハワイでは、農家や土地を守り育てる人々、環境活動家たちのあいだに見られる、喜びに満ちた人と自然との関係を研究しています。ブラジルでは、カーニバルや儀礼、政治集会を通して生まれる、神聖なものとの高揚感に満ちたつながりを探究します。タイでは、国の政治を変えつつある若者たちの活気に満ちた抗議運動を研究しています。そして英国では、コンシャス・ダンス(conscious dance)のムーブメントにおいて、心理的な方略として実践される、恍惚的な自己超越の経験を探究しています。
Ethics
Elements of Joy では、研究参加者の匿名性を守るため、欧州研究会議(European Research Council)およびユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の倫理審査委員会によって承認された、厳格な研究倫理の指針に従っています。ご本人が実名の使用を希望される場合を除き、データ収集の際にお名前を使用することはありません。詳しくは、以下の文書をご覧ください。
Participant Information Form
(English)


